日本経営教育研究所という組織があります。mikan-1
全国の幼稚園・保育園の経営者・先生を対象に経営指導・セミナーを開いている組織ですが、以前から当園での読み聞かせの様子の見学会を行ってくれていました。一昨年は北は山形、南は沖縄まで、全国から各園の園長・主任の先生が当園に来園されましたが、今回長野市にあるK保育園の園長先生が日本経営教育研究所の方と一緒に見学にみえました。

その先生から聞いた話です。
1.K保育園では、毎年同窓会のようなものを行っていて、同園を卒園した小学6年生を園に呼んで保育園児たちと一緒に会食をするのだそうです。毎年思うことには小学生にどうも落ち着きがなく、出されたみかんに割り箸を串刺しにしたりしてわーわー言いながら騒いでいたのだそうです。それが、ある年を境にぴったりと止み、落ち着いた雰囲気で過ごせるようになりました。その年来た6年生は、園で読み聞かせに取り組み始めた最初の年の子達でした……。

2.K保育園では、いわゆる保育雑誌ではなく「こどものとも」を毎月とっているそうです。ある日の夕刻、迎えに来たお母さんに「これ、お家で読んであげてくださいね。」と言ったところ……「園長先生、私を過労死させる気ですか」と言われたとのこと……。

1.について……読み聞かせや、10分間読書に取り組んでいる園、学校の子どもは「落ち着いています」これは、昔このコラムに書いた通りです。落ち着いた状況と、落ち着かない状況。どちらが好環境かはどなたもお分かりになると思います。園児全員が一堂に会するお誕生会などを公開している園も結構あるようですが、絵本に熱心に取り組んでいる所とそうでない所の様子を双方見てみると良くお分かりになるかもしれません。

2.について……このお母さんは、きっと「本にずっと苦しめられてきた」のでしょう。子どもの為に一生懸命働いて疲れて帰ったところに、さらに苦しいことをしろと言われたと感じたに違いありません。子どもが本好きになるかどうかは「どれだけの量の楽しみを本からもらったか」によります。絵本を読んであげることは、この楽しみの充填です。これがなく、この日本という国で「普通」に育つと大抵このお母さんのように本によって苦しめられることが多くなります。読書感想文・試験のための棒暗記……これでは「読書をしましょう」といくら言っても読むようにはなりません。しかし、OECDの学力調査上位常連国フィンランド・またノルウェーなどでは、家庭で読み聞かせをすることが「あたりまえ」なようです。小学生のいる家庭のテレビゲーム普及率はほぼ90%。ゲームが「あたりまえ」ではなく、読み聞かせが「あたりまえ」になったら、子ども・社会はずっと良くなることと思います。そのために私は、こうして今日もコラムを書いているわけです。