6月……梅雨の季節がやってこようとしています。子ども達の大好きな外遊びもできにくくなり、屋内遊びの尚一層の充実を図らなければなりません。

話は変わって、皆様ご存知のようにさいたま市は全国に20ある政令指定都市の一つですが、私立幼稚園の協会も、その政令指定都市の幼稚園団体協議会に加入しています。毎年どこかの市で全国大会が行われるのですが、昨年は仙台市で行われました。

そして、その時の基調講演は地元東北大学の川島隆太教授でした。
何年か前「脳トレ」などで有名になった川島教授ですが、その後仙台市教育委員会等と協力し合い、子どもの脳の発達と主に生活に関する研究を進めており、その結果の講演となったのですが、子育て中の皆様にお知らせしておいたほうが良い内容がかなりありましたので一部をご紹介いたします。(出典は仙台大会集録より)

—まず、人間の脳が動物の脳と大きく違うところは「前頭前野」という部位が発達していることで、このことにより想像・学習・意欲・集中・我慢・思いやりといった人間らしい所業が可能になっています。(教育とはこの能力を伸ばすことではないかと思います。)
そして、仙台市の子ども約4万名のデータを7年間追った結果、子どもの様々な意欲を上げるのに一番関係しているは「家族のコミュニケーション」であるということが判明しました。

そこで国のプロジェクトとして親子が10分位、家で遊べる「脳トレ遊び」というものを提案してやってもらい再調査したところ、親子共にストレス数値が下がり、子どもの情緒も安定するなど大きな効果がみられました。
また、他の場所では「親子で週に一度おやつにホットケーキを作って食べる」ということをやってもらったところ不安・うつ・非行的行動の数値が下がり、親子全体に想像以上の好結果が得られました。

それと、夜更かしをする子どもは「ミトコンドリア」というエネルギーを細胞中で作り出すものの機能が低下し、疲れやすく・学習が脳に残らず・成長ホルモンも少ないので免疫力が低いという結果が出ました。このことは学力だけでなく、50メートル走や持久走の記録にも差が現れています。子どもを9時10時まで起こしておくのは虐待行為に等しく、子どもが伸びようとする力を親が潰しているということになります。
他には、テレビ視聴時の脳は後頭葉と側頭葉しか働いておらず肝心な前頭前野は睡眠時に近くなっています。テレビを長時間見る子の脳はMRIで分かる程発達が遅れ、言語知能指数も低下しています。大人もテレビを長時間見る人はアルツハイマー症になりやすくなります。

そしてテレビ以上に注意が必要なのはスマホで、スマホ接触時、脳は寝ていて学習の効果を低下させます。スマホを長時間やる子程、学業成績が悪いとの明確な結果が出ましたので、特に幼児期には、タブレットを含めて絶対に触らせないでください。
最後に、朝ご飯のおかずの数と脳の発達には相関関係があり、多いほど脳の発達が良く、食べない子は学業成績だけでなく、進学・就職・仕事・成人時の性質・性格にも良くない影響が出ることがあります—

脳科学は、近年測定機器の発達に伴い急速に発達した分野です。しかし川島教授の述べていることをよく考えてみるとかなりが睡眠・朝ご飯・遊びといった「生活」の質に起因してくるのではないでしょうか。地元野田小学校の元校長であった、先々代の増田卓郎園長は、教育学者森信三の言葉として「生活が人をつくる」ということをよく述べておりました。何十年も前から、先人達はこのことを知っており、科学がそれに追いついてきたということかもしれません。

(幼稚園だよりH30.6月号より)