s_img_6591  先日運動会の開・閉会式の練習を見ていたら「音」に関する専門の勉強をした職員がつぶやきました。「ああ、この曲はやっぱり子ども達が自然に歌っているね……」

その曲は「人間っていいな」という曲でかなり昔のCDによる音源です。

理由を聞いたところ、最近の音楽はコンピューターにデータを「打ち込む」ことで発生させる電子音で作られていて、生身の人間が演奏しているものは少ない。「打ち込み電子音」は音程・リズムは正確に出るが音に深みが無くなる。一方人間が演奏したものは良い感じでリズム等に歪が生じそれが味のある音・人が作った音となる。

子ども達はそれを聞き分けることができるので、後者の方が心地良く、歌いたくなるのだろう……。とのことでした。

そして恐ろしいことにその力はまともな音を聞いていないと日々退行し失われてしまうそうで、確かにその時は年齢の小さい子の方が多く歌っているようでした。

なぜ「打ち込み」のような方法が主流になるかというとその方が低コストだからで、どうせ分からないのだから安上がりが良いという理屈なようです。まるで科学調味料の味で「美味しい」と言うからそれでOKのようなものですね。

以前ニュースで、フランスの一流シェフ達が、自国の料理文化を守るため小学校に出向いて子どもたちに料理を作って食べさせているというのを見ました。味が解らない人間が増えれば「フランス料理」という文化は滅んでいきます。

では「音」また「絵」「文章」はどうでしょう。

これらに共通することは、「本物」に触れさせなければ人間が、子どもが本来持っているそれらを味わう能力は退行してしまうということです。これは即ちかけがえのない「文化」そのものの衰退です。

我々、子どもに関係する大人はこのことを日々考える必要があります。そして子ども達が真に豊かな人生を送れるよう、与えるものを選んでいきたいものです。

体を動かしながら楽しそうに歌を口ずさむ子ども達を見ながら、そんなことを思いました。