毎年同じようなことを書いているような気がしますが、今年度も残すところあと一月となりました。「光陰矢の如し」とは申しますが、本当に早いものです。
話は変わって、過日の参観日、各組に見本誌を置かせていただいた「絵本ガイド」(全日本私立幼稚園連合会発行)に「いのちの木」(ポプラ社)という本が紹介されていました。この本は、2013年ようちえん絵本大賞を受賞している本です。不勉強なのと、また図書室の蔵書が福音館書店のものが多い傾向があるせいで、園には無く、早速取り寄せました。
この絵本の主人公は森に棲む「きつね」で、何と冒頭に亡くなってしまいます。子ども向けの絵本としてはとても珍しい展開です。そして森の仲間の動物達が、きつねが旅立った場所に集い、思い出を語るとそこから芽が出、森一番の大きな木に育つというストーリーです。
丁度良く、私が年長児に絵本を読む日に本が間に合いましたので読んでやりました。
三組共、しーんと静かに絵本を聞いておりました。いつもは絵本が終わると元気に「ありがとう」とか「またね」の声が出るのですが、その日はこれもなく、この絵本が深く子ども達の心に浸みたのだなと思いました。
次の日の保育日誌には、「きつねは幸せだね」「思い出の木って何だかいいね」と感想を自然に話す姿があったと記されていました……。これが絵本の力です。
二年、乃至三年、絵本のシャワー・養分を浴びた子どもの心はそれこそ木のように成長し、卒園する頃にはこのような話が真に聞けるようになります。
同様な本に「くまとやまねこ」(河出書房新社)があり、よく年長の三月に読んでやっています。こちらも素晴らしい絵本で、子どもの心にしっかりと届くようです。
そして心の成長は園だよりの裏面にある「つぶやき」に顕著に現れます。学期が進むにつれて、その数・内容がどんどんとレベルアップし選ぶのに苦労する程です。
今回の特筆すべき「つぶやき」。
三歳児クラスの「宝物は何ですか」というインタビューにて、
「宝物は、あやめ組のみんなです」
発達段階的に三歳児は自分の世界が大半であり、それで全く構わないのですが、絵本の力はそれを他者との関わりにまで深化させます。一年でこういったつぶやきが出てくるなら、今後は更に心の成長がみられることでしょう。
今年度はもう、終了しますが、この一年で様々なお子さんの成長がみられたことと思います。多方面に渡るご協力、誠にありがとうございました。(幼稚園便り H29.3月号より)